
- トランス脂肪酸は体に悪い!
- トランス脂肪酸が多いマーガリンはヤバイ!
こんなこと聞いたことありませんか?
でも本当にそうなのでしょうか?
その真相を探るべくいろいろ調べてみると、世間であまり知られていないトランス脂肪酸の真実がいろいろとわかりました。
ということで今回は、世間でのトランス脂肪酸に対する誤解3つを解き、そしてトランス脂肪酸の注意点を4つお伝えしていきます。
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そもそもトランス脂肪酸とは

出典:農林水産省HP
トランス脂肪酸とは、トランス型の二重結合が1つ以上ある不飽和脂肪酸の総称のことです。
トランス型とは、上記の画像にあるように水素原子(H)が炭素(C)を挟んで向かい合っている状態のことを指します。
つまり、トランス脂肪酸というのはトランス型の構造を持つ不飽和脂肪酸の総称なだけで、トランス脂肪酸という名の脂肪酸が1種類存在しているわけではありません。
トランス型意外にもシス型と呼ばれるものもあり、これは水素が同じ側にいる構造のことを表します。自然界の不飽和脂肪酸のほとんどは、構造がシス型です。
世間でのトランス脂肪酸に対する誤解3つ
みなさんは、トランス脂肪酸について以下のようなイメージをお持ちではないでしょうか?
- 自然界にはトランス脂肪酸は存在しない
- 加工油脂にはトランス脂肪酸が大量に入っている
- トランス脂肪酸(マーガリン)はプラスチックと同じ
こういったことをよく聞いたり、そういったイメージを持っていたりするかと思います。
しかし、実はこれらは正しくありません。
どういうことかをそれぞれ解説していきます。
トランス脂肪酸に対する誤解①:自然界にはトランス脂肪酸は存在しない
トランス脂肪酸は、油を加工して人工的に作られた加工油脂などの人工的に作られたものにしか入っていないと考える人が多くいます。
しかし、天然の食品にもトランス脂肪酸は含まれています。
具体的には、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品には、天然でトランス脂肪酸が含まれています。
つまり、トランス脂肪酸は自然界には存在しない、危ない人工的な物質というわけではないのです。
天然の食品に含まれるトランス脂肪酸の量は?
農林水産省が発表している食品中のトランス脂肪酸の量は以下の通りです。
食品名 | トランス脂肪酸量(g/100g) |
和牛(サーロイン) | 0.77g |
牛(ハラミ) | 1.2g |
輸入牛(サーロイン) | 0.8g |
牛乳 | 0.089g |
生クリーム | 1.1g |
バター | 1.9g |
農林水産省HPより数値を引用
バターに約2gのトランス脂肪酸が含まれているのは意外だったのではないでしょうか?
トランス脂肪酸2gというのは、WHOが定める1日の摂取上限値と同等※なので、かなり多めな印象です。
※1日の摂取カロリーを2000kcalとした場合
他の研究でも、普段食べる脂肪付きの牛肉には100g中0.33~1.87gほどのトランス脂肪酸が含まれているといったデータがあります。
まぁ、結局何が言いたいかというと自然界にもトランス脂肪酸は普通に存在するということです。
トランス脂肪酸に対する誤解②:加工油脂にはトランス脂肪酸が大量に入っている
トランス脂肪酸に対するもう一つの誤解として、加工油脂にトランス脂肪酸が大量に入っているという誤解もあります。
加工油脂に含まれるトランス脂肪酸の量は少ないとは言えませんが、私たちが想像しているよりも遥かに少ないです。
というのも、企業さ努力によって、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の量が昔に比べて大きく減っているからです。
例えば、ミヨシ油脂株式会社が販売している「ミヨシマーガリンLT」には、100g中0.91gほどのトランス脂肪酸しか含まれていません。(参照)
また、大手食品メーカー雪印が販売しているマーガリン「ネオソフト」には、100g中に0.8gのトランス脂肪酸が含まれているようです。(参照)
この量は、先ほどの表で示したサーロイン100gに含まれるトランス脂肪酸の量(0.77~0.8g)とさほど変わりません。

こんな感じでマーガリンなどの加工油脂に含まれるトランス脂肪酸は、私たちが想像しているよりも少ないのです。
トランス脂肪酸に対する誤解③:トランス脂肪酸(マーガリン)はプラスチックと同じ
3つ目のトランス脂肪酸に対する誤解として、プラスチックと同じというものがあります。
ここは厳密にいうとトランス脂肪酸というよりも、マーガリンに対する誤解ですが、これらはよく混同されがちなのでここで扱っています。
ネットなどでトランス脂肪酸やマーガリンとプラスチックを同様と考える主張の根拠として以下のようなものが言われています。
- トランス脂肪酸やマーガリンとプラスチックの構造が同じ
- マーガリンは長時間放置しても腐らない
- マーガリンにはアリが寄り付かない(バターには寄り付く)
- マーガリンの作り方はプラスチックと同じ などなど
こういったことを基にトランス脂肪酸やマーガリンがプラスチックと同じと主張されているわけですが、これらの主張には間違っている点があります。
細かく解説すると長くなるので詳細は割愛しますが、ポイントとしては以下の通りです。
- トランス脂肪酸やマーガリンとプラスチックの構造が同じ
→ 普通に異なる。むしろバターに近い - マーガリンは長時間放置しても腐らない
→ マーガリンを含め加工油脂はそもそも腐らない
→ 酸化や分解などの変質はする - マーガリンにはアリが寄り付かない(バターには寄り付く)
→ マーガリンにもアリは寄り付く
→ そもそもアリに私たちが何を食べるかを決めさせるべきではない - マーガリンの作り方はプラスチックと同じ
→ 普通に異なる
こんな感じで「マーガリンやトランス脂肪酸を同一視」している主張は割と根拠が乏しいようです。
上記の「トランス脂肪酸やマーガリンとプラスチックは同じ」に反証する主張をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
トランス脂肪酸の注意点4つ
ここまででトランス脂肪酸に対する誤解を解いてきました。
今まで思っていたほど危険なものではないというイメージを持たれた方もいるのではないでしょうか?
しかし、だからと言ってトランス脂肪酸やマーガリンを大量に摂取しても良いとは言えません。
その理由として、以下の4点が挙げられます。
- 健康への害はほぼ間違いない
- 商品によって大きなバラつきがある
- 大幅に減ったとはいえ、まだ比較的多い
- 表示義務がなく、入っている量が不明
それぞれ解説してきます。
トランス脂肪酸の注意点①:健康への害はほぼ間違いない
トランス脂肪酸やマーガリンの健康への害は、もうよく知られているかと思います。
まとめると、トランス脂肪酸を多く摂取することでLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増え、それにより心疾患のリスクが上がってしまうとされています。(参照)
他にも糖尿病のリスクや万病の元とされる体内での炎症を引き起こしたりと、トランス脂肪酸は何かとネガティブな効果をもたらします。(参照)
ただ、わかっていないこともある
これらの点についてはほぼ間違いなさげですが、一方でまだまだわかっていないことも多いようです。
例えば、天然で含まれているトランス脂肪酸とマーガリンなどの生成過程でできるトランス脂肪酸の体への影響は異なるのか。
数ある中でどのトランス脂肪酸が体に悪影響を及ぼすのか、などはまだ完全に解明されていないようです。
まぁ人の体はトランス脂肪酸は必要としておらず、不足することで体に悪影響があるといったこともないようなので、できるだけ取らないようにしておくのがベストかと思います。
トランス脂肪酸の注意点②:商品によって大きなばらつきがある
トランス脂肪酸に対する誤解のところで最近のマーガリンなどのトランス脂肪酸の含有量は少ないとお伝えしました。
ただ、トランス脂肪酸の含有量は商品によって大きくばらつきがあるので、そこは注意が必要です。
例えば、小岩井乳業のマーガリンでは100g中に0.11~0.27gほどのトランス脂肪酸が含まれています。(参照)
一方、マリンフードの「ツキマルゴールド」には100g中6.5g、雪印の「バター仕立てのマーガリン」には100g中6gと、上記のものに比べてかなり多くなっています。(参照)
こんな感じで商品によって結構なバラつきがあるので、この点は注意しておきましょう。
トランス脂肪酸の注意点③:大幅に減ったとは言え、まだ比較的多い
何度かお伝えしていますが、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の量は私たちが考えるよりもずいぶんと少なくなっています。
数年前までは100g中10~16gとか含まれていたことを考えると、今のマーガリンに含まれるトランス脂肪酸の量は半分以下〜10分の1ほどにまで減りました。
しかし大幅に減ったとは言え、まだ天然の食材に比べると比較的多いというのが事実です。
天然でトランス脂肪酸が含まれる牛肉や牛乳では、100g中に1g以上のトランス脂肪酸を含むものはほとんどありません。(参照)
一方で、モノにもよりますがマーガリンなどの加工油脂には、先ほども書いた通り6g以上も含まれているものもあり、両者の間に大きな差があります。
トランス脂肪酸の注意点④:表示義務がなく、入っている量が不明
そして、最後の注意点としては、日本ではトランス脂肪酸の含有量の表示義務がないため、企業が開示しない限りどれくらいトランス脂肪酸が入っているのかは知り得ない点です。
上記でいくつか紹介した企業は情報開示していますが、中には情報を開示していない企業もあり、明治やセブンなどの大手企業でもトランス脂肪酸の含有量を開示していません。
開示しない理由はいろいろあるかと思いますが、消費者のより良い選択のためには開示すべきですし、開示できないほど多くのトランス脂肪酸が含まれていると考えざるを得ません。
なので、トランス脂肪酸の含有量が開示されていないモノには注意しておくべきでしょう。
余談:加工済みの食品は含有量が不明
上記のものと少し類似しますが、パンなどの加工済みの食品でのトランス脂肪酸の含有量は基本的にはわかりません。
市販されているパンやお菓子の多くにはマーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどの加工油脂が使われています。
なので、そういった商品にトランス脂肪酸が含まれている可能性は非常に高いです。
ただ、マーガリンなどとは違い含有量を開示している場合がほとんどなく、こちら側はどれくらい入っているのかは知り得ません。
したがって、知らずに大量に摂取していたなんてことにならないように、商品裏側の原材料を見てマーガリンなどの加工油脂系が使われていないか注意しておきましょう。
私の結論:結局どうすれば良いのか
ここまでで、トランス脂肪酸やマーガリンに対する誤解を解きつつ、それらへの注意点もお伝えしてきました。
その上で、私が考えた結論は以下の2点です。
- トランス脂肪酸やマーガリンは想像しているほど悪者ではないが、できれば避けたい
- しっかりと自分で調べて考えて、食べるものを決めるべき
結論①:思ったより悪者でもないかも
1点目は、トランス脂肪酸に対する世間の誤解のところでも解説していきましたが、トランス脂肪酸は天然の食品にも存在すること、マーガリンのトランス脂肪酸の含有量が少ないことなどから世間が思っているほどの悪者でもないなという印象を受けました。
ただ、トランス脂肪酸を摂りすぎることによる体への悪影響は今のところほぼ間違い無いだろうなと思うので、個人的にはトランス脂肪酸が含まれる食品はできるだけ避けていこうと考えています。

結論②:自分で考えて食べる物を決める
そして2点目の自分で考えて食べるものを決めるべきということも感じました。
食品だけに限りませんが、「〇〇は良い」や「〇〇は悪い」といったようにすごく短略的に物事が伝わり、それだけで何を食べるかを決めてしまっている気がします。
例えば、今回お伝えしているマーガリンやトランス脂肪酸のように、「体に悪い」という情報が広まることで避けるようになった人も多いと思います。
ただ、今回のように調べてみると天然でも含まれていることや、トランス脂肪酸の含有量が非常に少ないマーガリンもあることなどがわかります。
こういった情報を得た上で「食べない」という決断をすることは問題ないかと思いますが、世間で騒がれていることを鵜呑みにして「マーガリンは悪!」「トランス脂肪酸はプラスチックだ!」なんて騒ぎ立てるのはいかがなものかなと感じます。
また、マーガリンやトランス脂肪酸は「体に悪い」の例でしたが、一方では「〇〇が××に良い」みたいなことが言われた途端に、その食品がスーパーの棚から消えるなんてこともよくあります。
そういったものも根拠に乏しいことがよくあるので、自分でちゃんと調べるなりしてから決めていくようにしたいなと感じました。
マーガリンやトランス脂肪酸は思っているほど悪者ではない!:まとめ
今回は、世間でよく悪者扱いされるマーガリンやトランス脂肪酸について考察してきました。
自分も知らなかったことが多く、トランス脂肪酸やマーガリンに対する見方も変わりましたし、ちゃんと調べてから判断しないといけないなと感じました。
皆さんも「〇〇は良い」「〇〇は悪い」といった情報に振り回されないように、自身で調べて考え、食べる物を決めていくようにすることをオススメします。
そのために必要な情報を、今後もここで提供していけたらなと思います。