皆さんは「食事炎症指数(Dietary Inflammatory Index:DII)」という言葉を聞いたことがありますか?
この指数は、私たちが摂取する食品や栄養素が体内の炎症にどれだけ影響を与えるかを表す数値です。
近年この指数が注目を集めてきているので、この食事炎症指数について詳しく見ていきたいと思います。
この記事は2013年に出た論文をもとに記載しています。
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食事炎症指数(DII)とは?
食事炎症指数(Dietary Inflammatory Index:DII)とは、食事による体内の炎症反応を表す指数です。

あまり聞きなれないこの食事炎症指数ですが、実は2014年ごろからすでに定義し始められていました。
ただ、GI値ほどの認知もないので今回取り上げてみることにしました。
具体的にどういう指標か
食事炎症指数が具体的にどういったものかというと、食品や栄養素の摂取による体内の炎症の指標として使われている物質(炎症バイオマーカー*1)への影響を示しています。
*1 IL-1b、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-a、C反応性タンパク質など。これらの数値の増減によって体内での炎症が促進・抑制されているかが判断されています。
食事炎症指数では、-1~1の間に数値が収まるようになっていて、1に近づくほど炎症バイオマーカーを増幅させる(炎症を促進する)影響が強く、-1に近づくほどバイオマーカーを減少させる(炎症を抑制する)抗炎症的な影響があるとしています。
体内の炎症が増えるとどうなるのか?
で、なぜこういった指数によって食品や栄養素の食事炎症指数を出すかというと、体内の炎症増加による様々な健康への悪影響がわかってきているためです。
体内の炎症増加によって影響があるとされるものは以下の通りです。
- 様々な病気(心血管疾患、癌、アルツハイマー病、肥満、糖尿病など)のリスク
- 細胞や臓器へのダメージ
- 老化の促進
など
こういったこともあるため、体内の炎症をできるだけ抑えるような食生活を心がけることが、健康で長く生きるために重要なことになってきます。
45の食品の食事炎症指数(DII)
では、以下に今回の研究で算出された食事炎症指数を紹介します。
食事炎症指数が低い順(抗炎症効果が高い順)に並び替えています。
食品・栄養素 | DIIスコア |
ターメリック | -0.785 |
植物繊維 | -0.663 |
フラボン | -0.616 |
イソフラボン | -0.593 |
ベータカロテン | -0.584 |
緑茶・黒茶 | -0.536 |
マグネシウム | -0.484 |
フラボノール | -0.467 |
ショウガ | -0.453 |
ビタミンD | -0.446 |
オメガ3脂肪酸 | -0.436 |
ビタミンC | -0.424 |
ビタミンE | -0.419 |
フラバン-3-オール | -0.415 |
ニンニク | -0.412 |
ビタミンA | -0.401 |
ビタミンB6 | -0.365 |
多価不飽和脂肪酸(PUFA) | -0.337 |
亜鉛 | -0.313 |
玉ねぎ | -0.301 |
アルコール | -0.278 |
フラバノン | -0.25 |
ナイアシン | -0.246 |
セレン | -0.191 |
葉酸 | -0.19 |
オメガ6脂肪酸 | -0.159 |
オイゲノール | -0.14 |
サフロン | -0.14 |
アントシアニン | -0.131 |
コショウ | -0.131 |
カフェイン | -0.11 |
タイム・オレガノ | -0.102 |
チアミン | -0.098 |
リボフラビン | -0.068 |
ローズマリー | -0.013 |
一価不飽和脂肪酸(MUFA) | -0.009 |
タンパク質 | 0.021 |
鉄分 | 0.032 |
炭水化物 | 0.097 |
ビタミンB12 | 0.106 |
コレステロール | 0.11 |
エネルギー | 0.18 |
トランス脂肪酸 | 0.229 |
総脂質 | 0.298 |
飽和脂肪酸 | 0.373 |
※上記は参考にした論文内で「Overall inflammatory effect score」として記載されていたものを掲載しています。
個人的な感想
上記のリストをご覧になっていかがでしたでしょうか?
個人的には、概ね予想通りでしたが、いくつか意外なものもありました。
例えば、トランス脂肪酸や総脂質、飽和脂肪酸などが炎症誘発性が高いというのはなんとなくわかりますし、一方で食物繊維やフラボノールなど一般的に健康に欠かせない食材・栄養素とされているものは抗炎症効果が高い(-1に近い)ので、納得です。
ただ、近年少量でも体に良くないとされてきているアルコールの数値が-0.278と割と良い方に傾いていて、高い抗酸化作用で知られるアントシアニンよりも高いというのが意外でした。
(と同時に、アントシアニンの数値の低さ(-0.131)にも驚きました)
このリストをどのように使うか
この食事炎症指数のデータを活用する方法としては、
- 数値が高い(炎症誘発性が高い)ものが多く入っている食品は避ける
- 数値が低い(抗炎症効果が高い)ものが多い食品をできるだけ摂取する
ようにすると良いでしょう。

45品目の食事炎症指数を活用して、炎症を抑えよう:まとめ
今回は、食品や栄養素の摂取による体内での炎症反応を数値化した『食事炎症指数(Dietary Inflammatory Index:DII)』について紹介しました。
一般的に健康に欠かせないと言われる食品・栄養素は食事炎症指数が低く(抗炎症効果が高い)、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸など取りすぎによる健康被害をよく言われているものは数値が高い(炎症誘発性が高い)ようです。
より健康的に生きるために、このデータを参考にして、抗炎症効果の高いものが多く入っている食事をしていけばよさそうですね。